『嫌われる勇気』から『幸せになる勇気』へ
アドラー心理学をやさしい対話形式で紹介し、多くの人に影響を与えたベストセラー『嫌われる勇気』。その続編である本書『幸せになる勇気』は、「理論」から「実践」へと一歩踏み込んだ内容です。
前作で哲人の言葉に感銘を受けた青年が、教育現場で実際にアドラー心理学を試すも、思うようにいかず再び哲人のもとを訪れるという流れで物語は展開していきます。今回も青年と哲人の対話形式がとられ、読者自身が青年の立場で読み進めていく構成になっています。
幸福とは「誰かの役に立っている」と実感すること
アドラー心理学が定義する幸福とは、「他者貢献感」です。すなわち、「自分は誰かの役に立っている」と主観的に実感できること。これは物理的に役に立っているかどうかではなく、あくまで“そう感じられるか”が重要とされます。
この考え方に触れたとき、私は大きな衝撃を受けました。なぜなら、それまでの私は「人のために何かをする」ということをあまり意識してこなかったからです。「自分のことは自分でやる」「人に迷惑をかけないように」——そんな価値観で生きてきた私にとって、他者貢献はどこか“他人事”のように感じられていました。
「小さな親切」が生む静かな幸福感
しかし本書を読んでから、私は「やらなくてもいいけれど、やったらきっと喜ばれること」を意識的に行うようになりました。たとえば、コンビニや駅の募金箱に小銭を入れるといった、ごく小さな行動です。
「お金ができてから」「時間に余裕ができてから」と考えていた私でしたが、実際には100円の募金ひとつでも、誰かの役に立つ実感がありました。しかも、それを習慣にすることで、自分自身の幸福度が確かに上がっていくのを感じました。
“与える側”になることは、特別なことではなく、今日からできる「小さな勇気」だと、本書は教えてくれます。
誰に対しても敬語を使う理由
本書を読み進める中で、私の対人関係に対する姿勢にも変化がありました。今では、職場のすべての人に対して、先輩・後輩問わず敬語を使うようにしています。
それは媚びるためではなく、上下関係を作らず「対等な関係」を築くための選択です。アドラーは、人間関係において重要なのは「尊敬」だと説きます。そして、尊敬とは“対等であること”が前提です。敬語はその関係を築くための、私なりの実践なのです。
もちろん、人間なので「避けたくなる相手」や「心理的に距離を取りたい相手」がいるのは当然です。けれど、そうした相手に対しても、私はアドラーの「課題の分離」を意識するようにしています。
課題の分離と感謝の実践
アドラー心理学では、他人の行動や感情は“他人の課題”とし、自分は“自分の課題”に集中するべきだとされます。相手がどう思うか、どう振る舞うかは相手の問題であり、自分がどう関わるかは自分の責任。これを意識することで、余計なストレスや感情の衝突が減りました。
また、本書では「褒めること・叱ること」を否定します。これらは相手をコントロールする手段であり、上下関係を前提とした行為だからです。代わりに必要なのは「感謝」だとアドラーは言います。
私も、誰かが自分のためにしてくれたことに対しては、評価するのではなく、ただ「ありがとう」と伝えるようにしています。感謝は、対等な関係の中でしか成り立たないコミュニケーションであり、人間関係をより温かく、誠実なものにしてくれると実感しています。
幸せになるには「選ぶ勇気」がいる
タイトルにもなっている「幸せになる勇気」とは、他人に委ねることなく、自分の人生を自分で選び続ける勇気のことです。自由とは、責任を引き受けること。選ぶという行為には、常に責任が伴います。
アドラーは、人はいつでも変われると語ります。ただし、そのためには「今のままでいたい」という無意識の欲求と決別する勇気が必要です。言い換えれば、幸せになるには“変わる決断”を、自分で引き受ける覚悟が求められるのです。
まとめ:この本がくれた勇気と習慣
『幸せになる勇気』は、私にとって単なる心理学の本ではなく、「行動を変えるきっかけ」になった一冊です。
・小さな親切を始めるようになったこと
・感謝の言葉を大切にするようになったこと
・誰に対しても対等な目線で接するようになったこと
これらの変化が、私の毎日を少しずつ、でも確実に豊かにしてくれています。
もし今、人間関係に悩んでいたり、幸福感を見失いかけているなら——この本は、その答えのヒントを与えてくれるかもしれません。
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