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【書評】嫌われる勇気の本質とは?課題の分離と原因自分論で人生が変わるアドラー心理学

はじめに:なぜ『嫌われる勇気』がこれほど多くの人に支持されているのか

岸見一郎氏と古賀史健氏の共著『嫌われる勇気』は、アドラー心理学を日本に広く知らしめた名著です。発売から10年近く経った今でも売れ続け、自己啓発書の枠を超えた「人生哲学書」として読まれており、自分も愛読書として何度も読み返しています。

本書が提示するのは「自由とは、他人に嫌われることである」という衝撃的なメッセージ。しかしそれは「傲慢に生きよ」ということではなく、「他人の課題を背負わず、自分の人生を生きよ」という極めて誠実な提案です。

「課題の分離」——他人の問題は他人に返す勇気

アドラー心理学の核心の一つが「課題の分離」です。私たちは日常的に、他人の問題を自分の責任として抱え込みすぎてしまいます。たとえば、「上司の機嫌が悪いのは自分のせいだ」と感じてしまうこともあるでしょう。

しかし、それは本来「上司自身の課題」です。アドラーは明言します。「相手があなたをどう思うかは、その人の課題である」。この考え方を理解するうえで有名なのが「水辺の馬」の例です。

——馬を水辺まで連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない。
これは「自分の努力はここまで」「あとは相手の問題である」という明確な線引きを示しています。

他人の課題まで引き受けることは、相手の人生をコントロールしようとする行為であり、自分も相手も不自由になります。だからこそ「課題を分ける勇気」が必要なのです。

他人の機嫌に人生を支配されるな

「今日は上司の機嫌が悪いから、話しかけるのをやめておこう」
「友達の顔色をうかがって、自分の意見を引っ込めた」
誰もが一度は経験したことのある場面です。しかし、それこそが「不自由な生き方」であり、自分の人生を他者に明け渡している状態なのです。

アドラー心理学では、こうした他者の反応や感情に責任を感じる必要はないと説きます。自分が誠実に行動し、敬意を持って接したなら、あとは「相手がどう感じるか」は相手の自由だからです。

嫌な上司がいても、それは「自分の問題」ではない

私たちはよく「人間関係で悩む」と言いますが、その多くは「他人をどうにかしたい」という欲望から来ています。「あの上司がもう少し優しければ」「あの人が自分をもっと理解してくれれば」——そうした思考は、一見自然ですが、実は他人の課題に踏み込んでいるのです。

上司が理不尽である、部下が言うことを聞かない。それ自体は「その人の課題」であり、自分が悩むことではありません。自分ができるのは「自分の課題」に集中すること。つまり、自分の言動・判断・態度に責任を持つということです。

「自己責任論」ではなく「原因自分論」で考える

アドラー心理学を誤解しやすいのが、「すべて自分の責任」として押しつぶされてしまうことです。しかし、ここでいうのは「自己責任論」ではなく、「原因自分論」です。

たとえば、「なぜ自分はこの人間関係に悩むのか?」と考えたとき、他人や過去の出来事を原因にするのではなく、「自分がその状況に意味づけをしている」という視点で捉えるのです。

「嫌われたくないから本音を言えない」「断ったら悪い人だと思われそうで頼みを断れない」——これらは「自分がそう解釈してそうしている」という選択です。自分で選んだのであれば、自分で別の選択もできるはず。つまり、「変われる自由」もあるのです。

他者批判に意味はあるのか?

本書の中で何度も登場するのが、「他者を批判しても、自分の人生は前に進まない」ということです。他人を責めたり、社会のせいにしたりしても、現実は何一つ変わりません。

むしろ、批判を通じて「自分は何も変わらない」という安心を得ているだけなのです。これはアドラーが「人生の嘘」と呼ぶもの。人は無意識のうちに「自分は正しい。悪いのは他人だ」と思い込むことで、自分を守っています。

しかし本当に前に進みたいなら、「他人がどうか」ではなく「自分はどうありたいか」に意識を向けるしかありません。

勇気を持って「自分の人生を生きる」

最終的にアドラー心理学が私たちに訴えかけるのは、「勇気を持て」ということです。
・他人に嫌われる勇気
・自分の信念を貫く勇気
・変化を受け入れる勇気

これらの「勇気」がなければ、人は他人の評価に怯え、過去に縛られ、永遠に本当の自由を手にすることができません。本書のタイトルが『嫌われる勇気』であることは、そのすべてを象徴しています。

おわりに:本当に自由な人生は、あなたの内側にある

『嫌われる勇気』は、一見すると「他人なんて気にするな」と突き放すようなメッセージに見えます。しかし実際には、「あなたにはもっと幸せになる力がある」という限りない信頼に基づいた哲学書です。

私たちは、もっと自由に、もっと誠実に、もっと軽やかに生きることができる。すべての鍵は、他人ではなく「自分の在り方」にある——そう確信させてくれる一冊です。

今すぐ読んでほしい。まずは一歩を踏み出す勇気から

もし少しでも「この本、気になるかも」と思ったなら、まずは手に取ってみてください。本を読むという行動自体が、すでに「変わる勇気」への第一歩です。

あなたの人生に「嫌われる勇気」が灯りますように。

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